「ジャズマスターでメタルができない」はただの甘え。

22/02/2019

大阪出身のスリーピースバンド「そこに鳴る」ライブレポート

「ジャズマスター」に反応して当記事を開かれた方、ようこそ。今度飲みに行きましょう。
「なんだこいつ」と思った方、ごめんなさい。最後まで読んで頂けたら幸いです。
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2月12日、ロンドンのカムデンタウンに位置するとあるライブハウスにて、3人の日本人が轟音を奏でていた。彼らは「そこに鳴る」という名前で8年前に結成して以来、初のEUツアー、ロンドン公演を開催していた。結成前は「凛として時雨」のコピーバンド「凛としてくれ」として活動していた彼らだが、今日では日本のプログレロック界隈を沸かせる存在として一際異彩を放っている。「凛として時雨」については各自ググってもらうとして、今回はそんな「そこに鳴る」の魅力について迫りたいと思う。

「そこに鳴る」とは随分と抽象的でふわっとした名前だが、彼らが織りなすサウンドは、ただ「そこ」に鳴っているだけに留まらずかなり迫力のあるものとなっている。彼らの特徴はなんと言ってもテクニカル且つ綺羅びやかなギター(鈴木重厚)のメロディーと透き通るような男女ツインボーカル、ダブステップ顔負けの重厚なベース(藤原美咲)に聞き手を飽きさせない多彩なドラムパターンである。去年3月に発売したEPのリード曲「掌で踊る」はYouTube上にて140万回再生を突破。今年1月には、ロックバンドの登竜門「下北沢SHELTER」にてワンマンライブを開催するなど、今後の活躍が期待されるバンドだ。

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驚異の音源再現力

2月某日、音楽配信サービスSpotifyにて「そこに鳴る」を鑑賞中、ふとロンドン公演の情報が目に飛び込んできた。チケットは£22とやや高めではあったが、日本のインディーズバンドの晴れ舞台を見逃すわけにもいかなかったので迷わず購入。

ライブ当日は、万全を期して開場30分前にベニューに到着。こんなに早く到着するのはライブを観に行く時と、夜ご飯を奢って貰える時のみだ。当初は別の会場での公演を予定していたらしいが、改修工事というあまりにも無残な理由で今回の会場になった。到着すると既に、いかにも「日本の音楽を浴びるように聴いていそうなイギリス人」が数人並んでいた。開場までの30分、他にすることもないので彼らと雑談を交わしていたら、どうも「凛として時雨」の関連で見つけたパターンが多いことが判明した。そして開場。日本人の客は筆者のみだった。

ドアが開いてから約1時間。異国の観衆に見守られる中、彼らは初めてロンドンのステージに立った。そんな彼らが一曲目に選んだのは、インディーズデビューEP収録曲の「pirorhythm stabilizer 〜only your world〜」。唸るサイレンのようにタッピングのフレーズが繰り返されるとともに、突如として幕を開けた舞台に観客の期待値は最高潮へ達していた。曲名通り、怒涛の「ピロリズム」を披露した彼らは開演10秒でその場にいた全員の心を鷲掴みにしてみせた。一曲目が終わると間髪を入れず2曲目、そして3曲目、最新アルバム収録曲「re:program」へと進んでいく。ライブ中のMCは殆ど無く、藤原が“Hello London, we are Sokoninaru. Please enjoy!”と軽く挨拶した後、12曲目の「エメラルドグリーン」まで駆け抜けた。今回のセットリストは全アルバム、EPから人気曲ばかりを集めた構成となっており、前衛的な演奏スタイルで初見の観客をも最後まで飽かすこと無く魅せ続けた。

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(上: ギターを「弾(ひ)く」というよりかは「弾(はじ)く」の方がしっくりくるようなタッピング奏法を披露する鈴木。)

まず彼らの魅力の一つとしてライブでの再現力が挙げられる。普段は設備の整った会場で演奏している日本のバンドからしたら、泣いて逃げ出したくなるようなイギリスの音響設備の洗礼をものともせず、CDで出したクオリティーをそのままライブで再現するのだ。スリーピースバンドでこれを実現するのには相当な技術と音作りの知識が必要とされるが、彼らはそれすらも自らの持ち味にし野性味のあるバンドサウンドを披露した。

ジャズマスターでメタルをするということ

今回のタイトルにある「ジャズマスター」とは所謂ギターの種類で、その名の通り本来ジャズを演奏する為に開発されたギターだ。従って、現代のポップやロックを演奏するのにはやや欠点が目立つギターとなってしまっている。しかしながら、その扱いづらさと愛らしいボディーのフォルムが今も奏者を虜にしてやまない、魔性のギターだ。有名なところだと、お茶の間への話題提供を生業としている某ゲス乙女・川谷えのぴょん氏や、「ワタリドリ」で高音厨のカラオケシンガー達を苦しめ続ける塩顔イケメンこと、川上ようぺ氏なども愛用している。確かにロックシーンで使用されること自体は珍しくないギターだが、更に激しいメタルともなるとやはりギターの特性上、音が細くなってしまうのでメタル系のギタリストからは敬遠されている。

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(上: 「愛らしいフォルムで弾き手を悩殺する」の図。)

「そこに鳴る」は飽くまでプログレロックの位置付けだが、彼らが演奏する曲の中にはロックの枠を超える重厚で激しいフレーズがいくつも散りばめられている。特にドラムは一般人が真似しようものなら次の日全身筋肉痛になっていてもおかしくないような高速フレーズが連続で畳み掛ける。ギター、ベースもまた然り。そんな楽曲をいとも簡単にジャズマスターで弾いてみせるのが「そこに鳴る」のギタリスト、鈴木だ。数あるギターの中から敢えてジャズマスターを選び、且つ、楽曲作りにおいて決して妥協しない姿勢こそこのバンドの真骨頂と言えるだろう。様々な楽曲が量産され、ギターを始めたての大学生が脳死でテレキャスターを選ぶ中、ジャズマスターを手放さない鈴木のこだわりには執念に近いものすら感じる。これを可能にさせるのは彼らの技術力の高さと心臓を抉るようなベース、独特な変拍子で最早リズムキープをしているのかもわからないドラムがあってこそ、と改めて実感したのが今回のライブだった。彼らには今後もジャズマスターで日本の音楽シーンを牽引して貰いたいと切に願う。

今回ご紹介した「そこに鳴る」はYouTubeやSpotifyでも視聴可能なので、興味を持って頂けた方は是非一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

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